●世界で一番幸せな犬
友達に頼まれて、絵本の原作を書いてみました。
見事にボツになって突き返されました。
悔しいので、ブログのこやしにしてやろうと思います。
反省はしてないが、少しへこんだ('A`)
以下、興味のある方だけどうぞ。

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友達に頼まれて、絵本の原作を書いてみました。
見事にボツになって突き返されました。
悔しいので、ブログのこやしにしてやろうと思います。
反省はしてないが、少しへこんだ('A`)
以下、興味のある方だけどうぞ。
中学校からの帰り道は土砂降りだった。
私は、改札から続く階段の一番下で、ため息をつきながら、厚い雲に覆われる空を見上げた。
手には学生カバン、着ているのは単なるセーラー服。残念だけど、どこにも雨から身を守る物は無かった。
辺りに見えるのは田んぼばかりの片田舎、それも午後三時ということもあって、人影はほとんどない。
小さな駅の屋根を叩く雨音ばかりが聞こえてきて、自分のため息さえも聞こえなかった。
母親は今頃、スーパーで働いているだろう。傘を持ってきてもらうことはできない。
タクシーは……って、乗るほどの距離じゃないんだよね。お金だって、もったいないし。
そうなると、やっぱり、走って帰るしかないかな。
「もう、やだなぁ」
雨は全くやみそうにない。
このままじゃ、いつまで経っても帰れないだろうし――覚悟を決めて、走るしかないか。
カバンを胸に抱きしめる。
走り出そうと足を踏み出したとき、誰かがすぐ隣に立った。
雨音のせいで、背後から近づいてくる気配に、全く気づけなかった。
「こりゃまた奇遇だね、なっちゃん」
顔を向けると、安っぽいスーツを着た、一番会いたくないヤツが立っていた。
「……なに? 何か用?」
私がちょっと睨むような目を向けると、ソイツはいつもの笑顔で返してくる。
「傘、持ってないんでしょ? 家まで一緒に帰ろうと思ってさ」
「いいよ。今、お母さんが傘持ってきてくれるし」
「あれ、おかしいな。さっき、店でお母さんに会ったんだけど?」
何の変化もないその笑顔が、一層言葉の皮肉を増したように感じた。
「濡れたら風邪ひくかもしれないだろ? そうしたら俺、怒られちゃうからさ」
私は視線を、灰色に染まった街へと向ける。
「だからさ、一緒に帰ろうよ。いつまで待ったって、雨はやまないよ?」
私は再び、スーツへ顔を向けた。
「傘、一本しか無いじゃない」
黒い大きな傘が一本――スーツの手には、それと小さなアタッシュケースが握られている。
「一緒に入ればいいだろ?」
「ヤダッ、そんなの絶対、ヤダっ」
私が睨み付けると、相変わらずの笑顔のまま、だったらと、傘を差しだしてきた。
「じゃあ、これ、使っていいよ。その代わり、一緒に帰ろうよ」
この気持ちに気づいたのはいつの頃だろう……なんて考えるのは、とても馬鹿げたこと。
いつでも、いつだって、私の気持ちは新しく生まれ変わっている。
昨日よりも今日。今日よりも明日。十分前よりも今。今よりも十分後。……一秒後には、一秒前よりも、気持ちが生まれ変わっている。
前から三番目、一番窓際の席。
教卓で講義を続ける先生の横顔が一番よく見える、特等席。
私は、運がいい。
智華(ちか)の手首に、白い包帯が巻かれていた。
左の、手のひらから手首にかけて、ナニカを包み込むように。
「また、やったんだ?」
私が聞くと、智華は少し悪戯っぽく微笑んだ。
「やっちゃった」
どこにも悪びれた様子は無かった。
それどころか、今さっきセックスでもしてきたかのような――すっきりとした満足げな表情さえうかがえる。
智華は手首を切るクセがある。
クセ――というよりも、趣味かもしれない。
手首を切ることが、趣味なのだ。
みんなで買ったボロボロの車――白いマーク2のトランクに荷物を積み終わると、俺はうーんと背伸びした。
ポカポカ陽気の良い天気で、見上げるとススで黒く濁った壁が見えた。茶色いトタン屋根に、乳白色だった土壁。水を出せば、三十秒は待たないと赤茶けた水が消えることは無いし、共同トイレだってしょっちゅう詰まる。風呂なんて贅沢品ついてないし、クーラーつけようたって壁が壊れちゃう。小学生が殴っても破れるような薄い壁で、女なんか連れ込めるわけがないサイアクの防音設備。
どこをどう間違えて、この21世紀まで生き残ってしまったのか不思議でしょうがない二階建ての建物だけど、いよいよ来月には取り壊されることになった。
四年前、俺が大学に通うために入ったオンボロ下宿。最初は十人以上はいたはずだけど、日をおうごとに一人減り、二人減り、最後まで残っていたのはたったの六人だ。しかも、新規入居は全く無し。
つまり、この四年間、ほぼ同じメンバーだけでこの下宿は占拠していたのだ。
大学の卒業式は、つい先日終わった。
俺達は、今月中にここを出ていかなければならない。だったらってことで、みんな同じ日に出発することに決めた。
そう。
今日はいよいよ、出発する日なんだ。