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2004年04月24日

●あげパンの話

給食係は大変だ!
このところ、小泉内閣総出で給食食ってウマーと言ったかどうかは知りませんが、ミョーに給食関係の話題ばかりが目につくわけですが、皆様、給食好きですか?


給食と聞いて思い出すのが、小学校時代の淡く切ないパラダイスです。
小学校時代の思い出を分類したとき、初恋、友情、裏切り、そして給食ではないかと思うのです。
それくらい、小学生にとって、給食の時間は人生の道しるべであり、生きる目的であり、学校へと向かう目標であったと思うのです。


四時間目が終わる寸前、五分前。


クラス中が一斉にそわそわしはじめ、それまで眠っていたヤツもむっくり起き出して今か今かと臨戦態勢を整え始め、先生無視して今日の給食批評を始めちゃうヤツがいたりして、まるでクラス中が洗脳されたかのように給食にばかり思考回路が向く瞬間、ありましたね。

バナナにシールが付いてるヤツはミョーに勝ち誇っていたり、牛乳キャップを無意味にコレクションしてみたり、誰かが休んでいる日に限って美味しいデザートが出てきたりして給食が始まった瞬間からデザート争奪戦が激しく開始されたり、学年が切り替わる時には必ず乾燥してカピカピになったコッペパンが教室に転がっていたり、デザートのプリンをぶんぶん振り回してグッチャグッチャにしたところを平皿に開けて「ゲロゲロ~」なんて遊んでいたら先生に思い切り怒られたこととか、給食全部食べなくちゃダメと言われて昼休みも五時間目も結局放課後まで給食と向かい合ってベソかいてる人とか……給食には人それぞれ、たくさんのエピソードがあると思います。

給食には子供たちを魅了する数々のメニューがあったわけですが、その中でも特に、キング・オブ・給食と呼ばれるにふさわしい食べ物があります。
全男子垂涎の的であり、ほどよい甘さとほのかな苦みが大人の味わいを感じさせ、かりっとした皮に包まれた純白の中身のほくほく感など、まさに赤ちゃんのほっぺをさわっているかのごとし。

そう、あげパン、です。

あげパン……この魅惑的な響き。
一度食べたその日から、あげパンの魅力を忘れたことはありません。
あげパンは美味しい、間違いなくクセになる。
しかし、あげパンの真の魅力は、それだけではない。
あげパンの表面は、かりっと油で揚げられてすぐ、大量の砂糖がかけられ、ほどよくとろけてまろやかな味わいになるわけだが――。

キング・オブ・給食であるあげパンは、そんな美味しいだけのグローバル主義が生み出す、程度の低い食べ物ではないのです!

あげパンは、全国一千万の小学生たちに、社会とは美味しい話ばかりではないんだよと、時には厳しいこともあるんだよと、挫折したっていいじゃないか、後悔したっていいじゃないか、努力を続ければ、きっといつか報われるんだよと、必死で訴えているんです!

なぜなら、あげパンは、はっきり言って食べにくい!
表面の砂糖は、あげパンをあげパンたらしめる必須条件ではあるものの、同時に、あげパンを食べにくくしている障害でもあるのです。
さらにはあげパンがナゼあげパンと呼ばれるのかってそりゃ油で揚げているわけですが、油でべとべとになるんですよ!
砂糖と油の絶妙なコンビネーションがあげパンの魅力を120%増加している反面、あげパンの攻撃力も同時に高めているのです。
そのためか、あげパンが給食に出た日など、小学生たちはいかにして手や服を汚さずにあげパンを攻略するかで必死なため、不思議なほど給食の時間は静かになり、結果としてあげパンが給食に出た日は全校生徒がそろってマジメちゃんに変身するわけであり、授業参観などにはもってこいの給食なのです。

どうですか、おわかりですか?
なぜあげパンがキング・オブ・給食と呼ばれるか、おわかりでしょう?

あげパンは、小学生の味覚中枢に対して麻薬的魅力をもつだけでなく、小うるさいガキどもを一瞬にして静かにさせてしまうほどの社会的影響力を持ちつつ、人生の困難を乗り越えた後に待つ至福の快楽まで、わずかな時間で教え込んでしまうのです!

人生なんです、あげパンは人生そのものなんです。

甘みもあれば苦みもあって、苦しいこともあれば楽しいこともある……努力の末に乗り越えた幸せ。

小学生よ、あげパンを食べなさい。
さすれば、自ずと人生が開けるであろう。

……そして、人生には裏ルートがあるということを教えてくれるのも、あげパンなのですね。

以下に、俺が小学生時代、苦心して編み出したあげパン攻略法を記しておきますが、これを知ってしまうと、もう二度と、純粋な心であげパンを味わうことは出来ません。
言ってみれば、このテクニックに気づいてしまったとき――子供としてのアナタは、死んでしまうのかもしれません。
純粋で、素朴な童心を失いたくない方は、これ以上読み進めるのはおやめください。
自分はもう大人であると、無邪気な童心などとうの昔に捨ててしまい、今の自分は汚れきっていると、そう自覚できる方のみに、このテクニックはお伝えしたいのです。

いいですか?

童心を亡くす覚悟は出来ましたか?

よろしい。
では、禁断のあげパン攻略テクニックを解説いたします。

まず、準備するものとしては、あげパン、先割れスプーン、人差し指と親指です。
フォークやナイフは使いません。
文科省やらPTAを敵に回そうと、あくまで先割れスプーンにこだわることが必須条件です。

通常のパンと同じようにあげパンを食べていたのでは、間違いなく手はべたべたになってしまうか、もしくは口のまわりがべたべたになってしまいますが、このテクニックを使うと、手も口も、最低限しか汚れません。

最初に、あげパンをトレイの上で、横向きに立てます。
ちょうど自分に向かってあげパンの底が見えている状態ですね。
次に、あげパンの右端か左端、これはどちらでも自分のやりやすい方でいいのですが、とにかく端っこの方に先割れスプーンを、あげパンに対して「平行」に突き刺します。

そして、人差し指と親指で、スプーンを突き刺した場所をしっかりとはさんで押さえ、スプーンを抜いて、再び、突き刺していきます。
ようするに、スプーンであげパンに切れ目を入れていくような感じですね。
イメージとしては、あげパンの脇腹をさいていくような感じでしょうか。

そして、しっかりと切れ目を入れ終わったら、汚れている人差し指と親指を、あげパン内部に差し込み、グルッと強引にあげパンを折りたたんでください。
そうです、こうすることで、あげパンの中と外がキレイに逆転することになるのです。
白い中身が外に来るので、手も口も必要以上に汚れません。

ちょっと文章での説明だと伝わりにくいと思いますが、俺は小学校時代、このようにして軽々とあげパンを攻略し続けてきました。
このテクニックを気づいてしまったその日から、あげパンなど恐るるに足らず。
あげパンに戦々恐々としている学友どもを見下げては、ゆうゆうと給食を味わうことが出来たのです。

フフフ、これで今日からアナタもあげパンマスター。
突然好きな女の子に招待されて、行った先であげパンが出てきたとしても、慌てる必要ありませんね。

……つか、俺、小学校卒業して以来、あげパンを私生活で食べた記憶が無いんですけどもね(;´Д`)

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